マンション建設問題



                                                                                                                        
                                                                                                                                                                                                                                                                                                     明治以来の異国情緒あふれた景観を誇り、横浜を代表する観光地でもある横浜市中区の
山手地区の一角に、大型マンション計画が持ち上がっている。


 周辺住民らは「歴史的景観を損なう」として建設反対を訴えるが、建設業者の法的手続きは
ほぼ終わり、着工は目前だ。住民らは「街並み保全へ英断を」と中田市長に迫っている。

横浜港が江戸末期の1859年に開港して以来、高台の山手地区は外国人居留地として栄えた。
今も教会や洋館、外国人墓地などが点在する風致地区で、年間100万人近い観光客が訪れる。

 その一角にマンション計画があきらかになったのは平成13年7月。平成12年5月に廃校と
なった外国人学校「セント・ジョセフ・インターナショナル・スクール」跡地だった。

 建築主は、住友商事など4社。約13200uの跡地に五階建て2棟を建設。260戸と211台分
の駐車場を設ける計画で、平成15年3月末の完成予定。

 都市計画法に基づき、周辺地区は本来は高さ10m以上の建物を造れない区域だが、15m
に緩和されている。 これは同スクールや横浜双葉学園など文教施設の高い建物があったた
めの措置で、市の山手地区景観風致保全要綱の高さ制限も同じく15mとなっている。

 住民は学校などの公共的な施設は例外として高さを受け入れる一方、住居部分については
”突出”しないように心掛けて景観を守ってきた。業者は、そうした慣行を無視してマンションの
高さを制限いっぱいの14.99mに設定した。

 周辺住民らは「横浜山手の歴史と文化を守る会」を結成し、反対運動を展開。市民や観光客
から集めた延べ3万人以上の反対署名を市に提出。地区内では「美しい街並みを守れ」などと
書いた横断幕を張っている。

 守る会は、階数を減らすよう求めてきたが、業者側は住民説明会などで「高さ制限が緩いた
めに割高な用地を購入した。採算の面からも低くはできない」と説明する。

 敷地は傾斜地のため、坂下から傾斜形の建物の最上部までは35mほどあり、地元の男性
(54)は「下から見上げればまるで要塞。歴史的景観は台無しだ」と憤る。
 これに対し市側は、用地内の公園を観光客の往来が多い通り沿いに移すなどして建物の圧
迫感を減らすよう指導したが、建設自体は「違法性はなく、許可せざるを得ない」(建築局総務部)。

 市の建築紛争調停委員会でも双方の折り合いがつかず、業者側は4月19日、建築確認申請
に踏み切った。5月10日までに建築確認証が出されれば、着工可能となる。住友商事は「早期
に建設する。交通渋滞や騒音など個別に迷惑をかける世帯には、理解を得るよう努力したい」
(広報部)という。
 
 手続きが最終段階を迎える中、住民らは中田市長に建築中止に向けて動くよう求めた。要望で
は、市が用地を買い取り、グラウンドだった部分は生かし、残る部分は地元住民と観光客の交流
拠点とする―というもの。

 守る会のメンバーらは今月上旬、市長就任目前の中田市長を訪ねた際、「街並み保全は必要」
との認識を示したという。住民らは22日、市長との面談を求めて要望書を提出した。
 
 守る会の村田直子会長(55)は「今、大型開発志向からの転換が求められている。建設を黙認す
れば、全国に数ある風致地区に悪影響を及ぼす。横浜観光にもダメージとなるはずだ」と話す。
  
  ―平成14年4月27日東京新聞より―

 ・山手地区景観風致保全要綱