第43回 BCS 賞
第22回 石川建築賞 (県知事賞)
Photo : MAKOTO YOSHIDA
Photo : MAKOTO YOSHIDA
Photo : HIROSHI YATSUO
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本美術館は石川県小松市主催の「宮本三郎美術館(仮称)建設提案競技」で最優秀案に選定され、建設された。
敷地内には、明治19年に織物倉庫として建設された木造石貼り2階建ての建物が現存しており、この倉庫を改修・増築して美術館として再生することが要求された。私たちは、既存倉庫の力強い木造架構に着目し、その架構形式及び架構から導き出される空間を増築部分(新設棟)において新たに展開させることにより、倉庫のイメージの継承と現代的な表現を獲得することをテーマとした。増築部の新設棟は開放的な中庭をはさみ既存の倉庫と併置させている。新設棟の架構は倉庫の木造架構のモジュールに合わせて構成し倉庫への共通性をもたせるが、その扱いは対比的なものとなっている。すなわち倉庫の石貼りの外壁で保護された木造架構に対し、新設棟では鉄の架構とし、ガラスを用い外部に積極的に表現している。また両者に「インターフェースゾーン」と呼ぶ中間領域を中庭に面して設け、空間構成にも共通性をもたせた。この呼応関係をもつ空間構成においては、対比的な架構の扱いにより、歴史と伝統の空間から現代的な空間への質の転換がおこなわれる。このような時の流れを内包する空間構造の展開こそ、時代と共に変遷する幅広い作風をもつ宮本三郎氏の美術館として相応しく、かつ都市に対し新しいシンボル性を獲得すると考えた。
コンペ後の基本設計及び実施設計段階においては、文化庁及び小松市等との協議により、展示空間の面積増、アプローチ部分の一部内部化、新設棟における収蔵庫の追加等がおこなわれた。また、施工段階においては蔵の架構に相当な腐朽箇所が発見され、急遽主体構造を鉄骨造として、旧木造架構と合わせたハイブリッドな構造形式として再設計するなど、歴史的建造物の保存再生に伴う困難な状況に直面した。しかし、市長や小松市役所、美術館準備室、施工会社をはじめとする関係者各位の熱意あるご対応もあり、歴史的木造建築物を保存再生し現代的建築との融合した全国的にも類例のない美術館が完成した。
本件は、こうした関係者一同の努力も評価され、北陸建築文化賞、石川建築賞、石川景観大賞、BCS賞など多数の賞を受賞することとなった。
DATA
■建築条件
所在地 :石川県小松市
主な用途 :美術館
敷地面積 :1,235.78m2
用途地域 :第2種住居地域、近隣商業地域
その他 :準防火地域
■建築概要
建築面積 :713.82m2
延床面積 :1,262.95m2
構造・規模 :S造、木造、一部RC造・地上3階
設計期間 :1999年3月〜1999年7月
工事期間 :1999年9月〜2000年8月
意匠設計 :八尾廣+角倉剛+大野高志
(THTアーキテクツ)
構造設計 :TIS & パートナーズ
設備設計 :環境エンジニアリング
照明デザイン :ヤマギワ
施工 :トーケン・道場建設
特定建設工事共同企業体