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RC造の建て売り住宅のリフォームである。2005年に第1期工事(リビングダイニング、子供室)を行った後、しばらくの期間を経た後に、2010年(洗面室、寝室、階段室他諸室)、2011年(客間)と第2期、第3期工事を行って、最終的に内部のフルリフォームを行うこととなった。既存の住宅は建て売りと言っても建築設計事務所の設計によるものであり、それぞれの空間についてはある程度意匠的な計画がなされていた。しかし、収納スペースの少なさから、どことなく全体にモノがあふれ、住みにくいとのことであった。また、空間的にもどことなく違和感を感じる部分があり、何かすっきりしない印象があった。

 建築主と打ち合わせを重ねながら、本当に必要なスペースと、余りだぶついているスペースをよく検証していくと共に、私は建物の「寸法」に着目した。床の段差や天井高さ、微妙な壁の位置から感じる違和感をよくよく検討してみると、少しずつ改善の方法が見え始めた。開口部についても、リビングの構造的に効いていない壁を取り払い、本来あるべき開口幅を要所で確保していった。

 リフォームは既存環境の良い点、悪い点ををいかに読み解くか、既存建物のポテンシャルの見極めが大事である。いわば東洋医学的な”気を読み、ツボを押さえ療法を行い、スムーズな気の流れをつくり、輝きを生む”ような醍醐味がある。限られた部屋の中での改修であるが、それだけに現状における間取りや微妙な寸法関係についても十分に意を払い、キッチンカウンターのあり方、収納や空調機の納め方、ベッドや書棚等の家具類を整理して空間の有効利用を図る上で、より繊細な感覚を要求された。リフォーム後10年から15年はお住まいになるということで、細部にわたる使い勝手の良さに対しても考えられるあらゆる配慮をもって丁寧に設計した。

 結果として各室の雰囲気は劇的に変化し、庭と室内の関係も改善して庭を整える楽しみという副産物も生まれ、完成時のクライアントのお喜びもひとしおであった。