Photo : HIROSHI TABUSE
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杉並区の歴史ある良好な環境の住宅地に建つ3人家族のための家である。敷地を初めて訪れた時、周辺を歩くと不思議と心地よい風が常に流れているのを感じたのであるが、その理由はすぐにわかった。敷地のすぐ南側と少し離れた北側に高木が数多く生い茂る公園が存在し、かつ敷地周囲には庭を持つ家も多く、地域全体が緑地の大変多いところであった。敷地を流れるそよ風は、これらの緑地を結ぶ緑風ともいうべきものであった。この心地よい風を生かした住宅としたい、という思いを強く抱き、設計に取り組んだ。クライアントはOZONEリビングセンターで建築家登録をしていた私を選んでくださった方で、出会った後決まった3年の海外赴任を経て、なお私に設計を依頼してくれた方である。敷地条件は日影規制等が思いの外厳しく、建物のボリュームをなかなかうまく形成できない条件であったが、クライアントの思いに応えるべく、建物を半地下1階、地上2階の法規上2階建て扱いとして日影規制をクリヤし、かつ敷地の南側に小さな庭を、北側には地下へ光を届けるパティオを確保して、敷地内に「そよ風」を導く工夫をした。
南側の高木のみごとな樹列が見えるよう、南側には各階に半外部空間としてのテラスを設けながら開口部を大きく設けて、夏季に南側から吹くそよ風を捕まえ室内に導く形状とした。地下1階には南側の庭とパティオを結ぶ風の抜け道を設けて南北の風の道をつくり、それを北側の階段室の吹き抜けと結ぶことにより、風が重力換気によって常に室内に流れる工夫をした。
お住まいになって数年が過ぎたが、この家は常に風が流れ、本当に気持ちいとのご感想をいただいた。最初に直感的に感じた地域の「そよ風」が、この家の設計を導いてくれたことに感謝している。
※近藤尚弘(room-nアーキテクツ)との共同設計
DATA
■建築条件
所在地 :東京都杉並区
主な用途 :住宅
敷地面積 :136.29m2
用途地域 :第1種低層住居専用地域
■建築概要
建築面積 :60.55m2
延床面積 :141.65m2
構造・規模 :木造・地下1階、地上2階
設計期間 :2011年11月〜2013年5月
工事期間 :2013年6月〜2014年5月
意匠設計 :八尾廣+近藤尚弘
(room-nアーキテクツ)
構造設計 :長坂設計工舎 長坂健太郎
設備設計 :八尾廣+近藤尚弘
施工 :本間建設